いままでさまざまなケースを見てきましたが、今回は遺産分割協議が終わった後に離婚が無効になってしまった場合について解説します。あまりなくイレギュラーなケースとなります。
離婚が無効になるケース
離婚は双方の合意に基づいて離婚届を提出することで成立となります。一方騙された、脅迫をした、勝手に一方が離婚届を出した場合などは、離婚が認められません。
そのような場合は協議離婚となり、離婚が有効か無効かを裁判所が判断するケースがございます。
遺産分割協議書の有効性
遺産分割協議が成立した後、離婚が無効になってしまった場合(離婚無効確認訴訟で離婚が無効になる判決が確定した場合)協議書が有効か無効かどうかが争点となります。
離婚無効=相続人が変わるということですので、似たような事例として死後認知があります。民法784条では認知は出生時に遡ることができるが、既に第三者が取得済みの権利は侵害できないとされています。
-
第784条 (認知の効力)認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。
そのため法律では明記されておりませんが、遺産分割協議書の効力も遡って否定することはできないと考えられております。
従って死後認知において遺産分割協議が成立した後に、死後認知が確定した場合、遺産分割協議は有効、認知によって相続人の権利を得たものは価額の支払い請求を行います。
離婚無効の場合も同様で民法910条により価額の請求をすることになるでしょうか?この点について、離婚無効は認知と異なり遡及効を制限する文言がありません。そのため遺産分割協議は共同相続人の一人を除外してしまったものとみなされ再度やり直しの必要があると考えられております。
-
第910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
近しいものの過去の判例では、母の死亡による相続において共同相続人である子の存在が遺産分割やその他処分後に明らかになったとしても民法784条、910条は類推適応できないというものがあります。
不動産
遺産分割協議が終了し相続人の一人に対して所有権移転の手続き(相続登記)が完了したとします。その後離婚無効となった場合、遺産分割協議は無効となるため所有権移転の登記も無効になります。
そのため不動産を取得した相続人が義務者、不動産を取得しなかった相続人が権利者となり抹消の手続きが必要となります。
移転登記が終わったあとに相続人が全く関係のない第三者に移転した場合はどうなるのでしょうか?この場合も離婚無効訴訟が確定した後は遺産分割協議は無効となり、不動産を取得した相続人は無権利者となるので、その第三者も無権利者となり対抗できません。