被相続人がマンションやアパートを持っているケースがあります。このような場合の相続手続き等はどうなるのでしょうか?今回は被相続人が不動産収入を持っていたケースについて解説します。
遺産から生じた賃料の法的な取り扱い
遺産である不動産からえた賃料収入の法的性質どうなるのでしょうか?遺産から得た賃料収入は遺産そのものではなく遺産の管理利用行為によって生じるものなので本来は遺産分割の対象となりません。遺産分割協議成立までの間に生じた金銭債権として処理されます。
この金銭債権は相続分に応じて当然に分割され各共同相続人が単独で確定的に取得するものとなります。また各共同相続人が確定的に取得する以上その後の遺産分割協議の影響も受けないものと過去の判例からされております。
このような背景より、遺産分割協議までに発生した賃料は各共同相続人がそれぞれの相続分に応じてもらうことになりますので、特別な条項を遺産分割協議書で設けない限り遺産である不動産を取得することになった相続人は遺産分割協議成立までに発生した賃料を全額受け取ることはできないことになります。
特定の相続人が全額取得するケース
では特定の相続人が、全額賃料収入を取得するといったことはできないのでしょうか?特定の相続人が遺産分割協議成立までの間に発生した賃料を取得させることに全相続人が同意している場合、賃料債権を遺産分割協議の対象とできると過去の判例からされております。
不動産にかかる費用の負担
不動産を運営する上で不動産の修繕費用や管理費用、固定資産税などの支出が発生します。これらの負担は誰が行うことになるのでしょうか?特に決まりがない場合は民法898条、民法890条に基づき各共同相続人が相続分に応じて支払い義務を負うことになります。
なお共同相続人同士で合意形成ができる場合、遺産から不動産運営に関する費用を支出することが可能です。実務上では賃料収入を取得することになる相続人が費用負担もすることが通例であるためその旨を遺産分割協議書に書いておく必要があります。
- 第898条(共同相続の効力)
- 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
- 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
- 第899条(共同相続の効力)
- 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
NGな遺産分割協議書
最近ではネットやYouTubeといったさまざまなメディアがあるので、それを見よう見まねで遺産分割協議書などを素人作成しトラブルになるケースが増えております。下記はその作成例です。
第一条 相続人Xは下記不動産を取得する。
記
所在 東京都大田区大森北〇ー〇ー〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇番
種類 〇〇
構造 〇〇
床面積 〇〇.〇平方メートル
以上
この遺産分割協議書は一見問題なく思われるかもしれませんが、この遺産分割協議書では相続開始から遺産分割成立までの賃料収入を誰がもらうのか、管理費等を誰が負担するのか?の定めがなくトラブルになります。