実際の相続手続きでは遺産分割協議中に相続人が亡くなってしまうなど想定外の事態が発生することもあります。その一例が数次相続です。今回は「数次相続」についてご説明いたします。
数次相続とは?
数次相続とは、名前の通り立て続けに相続が発生することを言います。例えば祖父が亡くなり祖母と父が相続人となったのですが、その遺産分割協議中に祖母がなくなってしまうようなケースです。一つの相続問題が終わる前に立て続けに相続が発生しています。これが数次相続です。
- 1月1日 祖父死亡、相続発生、相続人は父と祖母(1次相続)
- 3月11日 祖母死亡、相続発生、相続人は父(2次相続)
相続権が他の相続人に継承される「代襲相続」というものがありますがこれとは異なります。代襲相続の場合は、被相続人より先に相続人が亡くなっている必要があります。先ほどの例の場合、祖父がなくなる前に父がすでに亡くなっているという状況です。一方数次相続の場合は被相続人が亡くなった後にその相続人がなくなるという状況です。
最初の相続を1次相続、その次に起こる相続を2次相続といいます。もちろん場合によっては3次相続、4次相続になることもあります。一般的に数次相続は相続人が増えてしまうため処理するのが非常に大変です。遺産分割協議に時間をかけてしまうと、数次相続が発生する確率が高まります。厄介ごとにしないためにも、可能な限り早く相続手続きを行うことが重要です。
遺産分割協議の取り扱い
数次相続が発生した場合の遺産分割協議はどのようになるのでしょうか?数次相続が発生した際は原則として遺産分割協議書を別々に作成します。しかし遺産分割協議書の原則として、全ての相続人が署名捺印をしなくてはいけません。数次相続の場合すでに相続人が亡くなっているのでどのようにすればいいのでしょうか?
まず1次相続において、1次相続の被相続人の下の部分に、遺産分割協議中に亡くなってしまった相続人として「相続人兼被相続人○○○」と記載いたします。また相続人の署名欄において相続人の地位が被る場合「相続人兼○○○の相続人」と記載いたします。2次相続の遺産分割協議書は通常通り作成いたします。
相続登記の取り扱い
1次相続の被相続人が不動産を持っていた場合、相続登記を行わなくてはいけません。数次相続の場合は、遺産分割協議中と同じように原則として分けて行います。ただし中間の相続人(1次相続の相続人=2次相続の被相続人)が1人しかいない場合は1回の登記申請で行うことができます。(中間登記省略)
登記には費用がかかるので、1回で済む方が登記代が節約できます。以下のような事例が中間の登記を省略できる場合です。
- 1月1日 祖父死亡、相続発生、相続人は父のみ(1次相続)
- 3月11日 父死亡、相続発生、相続人は配偶者と子(2次相続)
数次相続と相続税
数次相続が発生した場合、相続税はどのようになるのでしょうか?
まず相続税の申告義務のある人が亡くなった場合、その相続人が申告と納税義務を引き継ぎます。(2次相続の相続人が引き継ぐ)
通常相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。数次相続の場合、申告の期間が延長されます。1次相続の相続人が、遺産分割協議中や相続税の申告中に亡くなってしまった場合、先ほど述べたように2次相続の相続人に引き継がれます。この際、2次相続の相続人は提出義務者(1次相続の相続人で、2次相続の被相続人)の死亡を知った日の翌日から起算して10ヶ月以内と延長されます。
なお基礎控除は通常の相続と同じで全く変わりません。1次相続発生から10年以内に2次相続が発生した場合、2重課税により過度な負担を避けるために相次相続控除が適用されます。