相続放棄をした場合、相続人の財産を勝手に処分することはご法度となります。しかし財産がある場合、「その財産から葬儀費用だけは捻出しておきたい」というケースもあると思います。
常識的な範囲内であれば相続財産から葬儀費用を支払っても問題ない場合もあります。しかし火葬の費用やお寺へ払う戒名やお布施などはどこまでが許容なのかはわかりにくい部分でもあります。今回は相続放棄をした場合と葬儀費用について詳しく解説いたします。
相続放棄
一般的に相続放棄の手続きをした場合で単純承認(亡くなった人の財産を引き継ぐ)とみなされてしまうと相続放棄が認められなくなります。今回のケースですと葬儀費用を相続財産から捻出した場合、単純承認と見られてしまうかどうか?が争点となります。
過去の裁判例では大阪高裁で葬儀費用は相続財産からの支払いが認められたケースもあります。常識的な範囲では葬儀費用を相続財産から支払っても相続放棄に影響はしないと考えられます。
葬儀の規模感をできるだけ小さく行えば問題ないと考えられます。また相続人が自腹で葬儀費用を捻出した場合、相続財産と一切関係ないため問題なく相続放棄できます。
一般に葬儀費用として認められるもの
一般に下記は相続費用として認められます。
・死体の捜索費用
・死体や遺骨の運搬にかかった費用
・お通夜や葬式にかかった費用
・火葬費用
・埋葬や納骨にかかった費用
・お寺へのお布施や心づけ、読経料、戒名料 など
華美でなければ仏壇や墓石の購入も認められます。
葬儀費用として認められない可能性のあるもの
一方下記は認められないケースがあります。
・香典返し
・喪服代
・墓地の購入費用
・初七日や四十九日、一周忌にかかった費用 など
ただ一方でこれは法律で明記されているのもではないため、個々のケースにより判断が分かれます。最終的な判断を下すのは裁判所です。
なお相続人同士におけるトラブル防止のためはもちろん、「葬儀にお金は使いました」という証拠になるので必ず葬儀に使った費用は明細や領収書を残しておきましょう。お布施などは領収書が出ないためメモやノートに記録しておきましょう。
※埋葬費、葬祭費、香典は被相続人の財産に該当しないためこれらを受け取っても問題なく相続放棄できます。
照会書
相続放棄をした際、家庭裁判所から照会書や回答書が届きます。そちらに被相続人の財産を記入する項目がありますが、絶対に虚偽の情報を記載しないようにしましょう。相続財産から葬儀費用を捻出した旨もしっかりと記述する必要があります。